小池淳義メッセージ
【第1回】世界最先端2nmロジック半導体のパイロットライン稼働にむけて
2nm半導体の実用化という、世界でも類を見ない偉業を達成するために設立されたRapidus。実現すれば国内はもちろん、世界のものづくり産業に大きなインパクトならびにメリットをもたらします。2022年8月の会社設立から約2年半、本日に至るまでの心境を代表の小池に聞きました。
一歩ずつ確実に。1日の遅れもなくスケジュールどおり進行
――パイロットラインの稼働に向け、全社員一丸となって取り組んできました。
私たちが作ろうとしている半導体は、2nmの超微細な精度を実現するために、GAA(Gate All Around)というこれまでにない構造となっています。2nmノードのGAAはIBMが長年の研究をもとに、2021年5月に基礎的な研究内容について発表しました。しかし、量産化も含めた実用化に関しては、確立されていませんでした。
そこで私たちは、半導体のベテランエンジニアを中心とした約150人を、ニューヨークにあるIBMの研究開発拠点に派遣し、実用化に向けての技術確立を目指しました。そうして最先端の技術を習得した多数のエンジニアが日本に戻り、パイロットラインでの製造を開始します。
――基礎研究から実用段階に向けては、具体的にどのようなハードルがあるのでしょう。
まずは、複雑な立体トランジスタ構造をいかに実現するかの設計技術や、異なる素材や組成を組み合わせる技術などがあります。
さらに、今回のパイロットラインで導入した装置は200台以上あり、中でもキー装置であるEUV露光装置を量産目的で稼働させるのは、国内では初めての取り組みとなります。
そこで、ニューヨークに派遣しているエンジニアに実際にEUV露光装置を使ってもらい、研究を進めています。さらに、EUV技術でASMLと共同研究を重ねているベルギーのimecにもエンジニアを派遣し、同分野の研究を進めています。
このように、技術的難題や課題は山のようにあり、その一つひとつをクリアしていくことは、正直、大変な難しさと苦労の連続です。苦労を乗り越えていく上では当然、トラブルもたくさんあります。しかし、一人ひとりのメンバーの熱意や努力により確実に一歩ずつ前進し、これから始まるパイロットラインでの製造を着実に進めていきます。
エコシステムを構築し、従来と比べ2~3倍のスピードで最先端半導体を顧客に届ける
――開発スピードが速いのもRapidusの特徴ですよね。
まず大きいのは、処理速度が速く、製造データがたくさん取得できる枚葉式(single wafer processing)ですべての工程を行うことです。
また、現在の半導体業界は分業制が進んでおり、「開発・設計工程」「前工程」「後工程」と、大きく3つに分類されており、それぞれの領域でキーとなる技術や企業があります。しかし、半導体製造全体が高度化している現在、全体の開発リードタイムがより長くなっているという課題があります。
そこで私たちは、この課題を解決するために3つの全工程を組み合わせ、各領域のトップ企業と高いレベルでコミュニケーションを取りながら開発を進めていくという、これまでにない新たなビジネスモデルならびにエコシステムを構築しようと考えています。
新たなエコシステムが実現すれば、センサーなどから取得した製造データを、AIをフル活用して素早く解析。開発・設計工程を担う、半導体設計会社にこちらもスピーディーにフィードバックし、設計支援を行うことが可能となります。
その結果、全体の開発リードタイムの短縮が実現するだろうと。具体的には、従来の2~3倍の開発スピードの実現を目指しています。
単なるメーカーではない――チャレンジ精神に溢れたメンバーが一丸となって
――現在700名ほどの従業員がいますが、Rapidusメンバーならではの特色など感じていることがあれば教えてください。
全従業員に共通して言えることは、世界最先端の技術や製品を世の中に生み出していく。そのような仕事に取り組むことに、喜びを感じるタイプであることです。一言で説明すればチャレンジ精神を持った、エネルギーの塊のようなタイプといえるでしょうね。
現状はシニア層が多いことも特徴といえます。かつて日本の半導体産業が隆盛を極めていた1980年代後半から90年代にかけて若手エンジニアとして活躍していた人たちが、Rapidusの最先端半導体製造実現のために多数集まってきてくれているのがその理由です。日本はかつて世界屈指の半導体大国でしたから、基礎技術はもちろん量産技術を持っているエンジニアも大勢います。
――従業員とのコミュニケーションはいかがでしょう。
私自身がチャレンジ、新しい挑戦が好きなタイプですから、常に現場に出て、具体的にどのような取り組みを行っているのか、頻繁に確認しています。そしてその場で、現場メンバーと意見交換するなど、フランクなコミュニケーションをしています。
私たちの挑戦はかなり大きなものです。そのため一人ひとりのメンバーの努力はもちろんですが、チームワークを持って取り組むことも重要だと考えています。そのため周年のイベントや、全社員を対象としたオールハンズミーティングを実施するなどして、チームワークの醸成にも努めています。
チームワークという観点では、先のエコシステムの構築においても重要だと捉えています。Rapidusが世界一の企業になるといった利己的な考えではなく、Rapidusが世界の半導体エコシステムの中で、どうすれば貢献できるのか。
「単なる部品屋になるな」
「お客様の求める製品をしっかりと理解せよ」
「最終製品を意識した上で、自分たちの仕事ならびに半導体を作ることが大事だ」
これらは私が日々、従業員にかけている言葉でもあり、このような共創精神が必要不可欠だと考えています。
――チームワークを体現するようなエピソードがありましたら聞かせてください。
昨年、EUV露光装置を北海道の千歳市にある工場「IIM-1」に搬入する際に社内イベントを行いました。12月25日だったこともあり、装置を模したケーキを用意し、IIM-1の従業員はもちろん、各拠点のメンバーにまで全社員に振る舞い、皆でケーキを食べながら祝いました。もちろん、ケーキのサイズは10mもありませんでしたがね(笑)。


――最後に、メッセージをいただけますか。
挑戦という観点も含め、日本は優れたものづくり大国だと私は思っています。ただ残念なことに、昨今はその勢いやイメージが弱くなっているように感じます。しかし、私たちの事業が成功すれば、半導体はすべての産業の根幹、コメともいえる製品ですから、再び日本の産業界に、ひいては世界のものづくり産業に貢献するでしょう。
このような大きな意義、やりがいのある仕事を、これからも従業員と一緒に一丸となって取り組み続けていきます。
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